共通テスト以降、国公立大学や私立大学の現代文の難易度が上昇しました。
その特徴の一つとして、近年注目されている新しい考え方に関する文章が出題されるということが挙げられます。
今回は特に重要な2つの考え方を学べる本を紹介します。
① 「ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力」 著者:箒木蓬生
ネガティブ・ケイパビリティとは「答えの出ないような状況に対して耐える力」です。私たちは問題に直面すると、すぐに答えを出して「分かろう」としてしまいます。「分からない」という曖昧な状態ははっきりせず、気持ちが悪いと感じてしまうからです。
しかし、人生で直面する問題の多くは、早急に解決できたり、分かったりするものではありません。分からない曖昧な状況に耐えるということも一つの能力である、という新しい考え方がネガティブ・ケイパビリティです。学校教育では、既に答えのある問題を解けることを中心に評価されがちであり、答えのない問題への耐性や対応力が磨かれにくいのもまた事実かと思います。
近年の大学入試(大阪大学、北海道大学、南山大学等)や高校入試(須磨学園高等学校)、中学入試(高輪中学校)で出題されており、一度学ぶ価値のある新しい考え方です。様々な分野に応用が効く「新しい人生哲学」とも言えるので、是非ご一読下さい。
②「私たちのウェルビーイングをつくりあうために その思想、実践、技術」 監修・編著 渡邊淳司 ドミニク・チェン
ウェルビーイングとは「身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること」を意味する概念です。日本語では「幸福」「幸せ」と訳されることが多いですが、微妙にニュアンスが異なる意味になります。個人の幸福だけでなく、社会的な幸福感、つまり「他者との関係の中での幸せ」を含んでいる点が新しい部分です。
近代以降、アイデンティティー(自己同一性)の確立が重視され、「他者」から切り分けた「自分」という存在への固執が生じました。「より幸せな自分を求める事」=「幸福」という個人主義的幸福観が現在も主流ではないでしょうか。
しかし、私たち人間は個人であると同時に社会的存在でもあります。「自分」が存在できるのは「他者」がいるからではないでしょうか。当然ではありますが、「自分」は社会の一部であり、「他者」と相互依存的な関係を持ちながら私たちは生きています。「自分」だけでなく、周りの「他者」と一緒に幸福になれる方向性を模索する方が、より社会全体で幸福になれるという新しい考え方がウェルビーイングです。
本著は様々な分野の専門家の方々が、ウェルビーイングを軸に話を展開されており、ウェルビーイングという概念が単なる理想的概念ではなく、実際の幸福度の向上という利益をもたらす新機軸になると実感できる構成になっています。名古屋大学の現代文でこの著作が出題されたことを皮切りに、ウェルビーイングの概念を含む文章の出題が入試で相次いでいます。こちらの本も是非、ご一読頂き、家庭で話をする契機として頂きたく思います。
上記の2冊の本は、Amazonなどのオンラインショップでご購入頂けます。
また、塾で貸し出しも実施しておりますので、保護者様も含めて是非ご一読頂けたらと思います。